1947年のアメリカ映画、チャールズ・チャップリン製作・監督・脚本・主演。
原案はオーソン・ウェルズとクレジットされているが、実際のところは「モデルになった実在する殺人犯の映画を作りたいんだけど、主演やらない?」みたいなざっくりした話を持ち込んだだけ、のようだ。
あとでトラブルにならないようにクレジットに彼の名前を入れたけど、チャップリンとしては言うほど協力してもらってないのにあとになって「あれ俺がアイデア出したんだぜ」って吹聴して回るオーソン・ウェルズにちょっとガッカリした、というエピソードがあるそうだ。
もっともそれはチャップリン側の主観なので、実際のところはわからない。
超ざっくり言うと、金のために殺人を繰り返す男の生涯を追う話。
この作品を紹介する文章はどれもキーワードとして「ブラックコメディ」と「反戦」を挙げているし、たしかにそういう映画なんだけど。
なんていうか、スリルで、サスペンスで、ホラーだ。
正直個人的には反戦の部分はちょっとむしろ冷めた目線で見ちゃったくらい。
ラストのほうでこの作品を代弁するとも言える「戦争はビジネス、一人の殺害は犯罪を生み、百万の殺害は英雄を生む」というセリフがあるが、そしてこの映画で語りたかったのはまさにそれである、ということもわかるんだが。
もっとこう、こういうご時世に見たせいもあるのかもだけど、人にとっての正義ってなんだろう、悪ってなんだろう、みたいなことを大いに考えさせられた。
数多の中年女性を巧みな話術で手玉に取り、殺しては金を得るさまはまさに冷酷なハンター。さまざまな職を持ち、フランス中を超人的な忙しさで駆け回る。
もともと長年尽くしてきた銀行を首になったという過去を持つ彼には愛する家族がおり、その暮らしを守るために殺人業に手を染めた。
仕事として割り切り精力的に働くさまは、実にコミカルであり、そして非常にホラーであった。
チャップリン演じる主人公ヴェルドゥのコミカルな動きは最高だ。さすがの真骨頂と言うべきか。
深刻でゾッとするような話なのに、その台詞の言い回し、身のこなし、すべてが堂に入っていて、美しく、それがゆえに滑稽。
ジャッキー・チェンなんかも影響を受けてるんじゃないか、とは、家人の談。確かに。
そんな彼が毒薬をテストしようとして思いとどまった相手がいる。
彼女は戦争で夫を亡くした。愛する彼のためなら人殺しだって厭わなかったわよ、みたいな言葉に、彼はなんらか感じるところがあったのだろう。
世界恐慌で場面が一転し、ヴェルドゥは愛する家族も、せっせと貯めた財産も失い、憑き物が落ちたような疲れた老人となり、先述の女性との出会いも手伝って自ら逮捕され、斬首刑に処された。
その裁判で「戦争に比べたら人殺しとしては俺なんてまだまだアマチュアだった」みたいな言葉を残した。
単純に一本の映画として、時間を忘れてハラハラゲラゲラドキドキさせてくれ、120分という長さも忘れてしまうくらい夢中で観た。
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